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Case2:とりかえばやの匣

 八月。本来は春木が忙しいだろうこの時期に仕事の依頼などしたくはないと思いながらも江角は何度目かわからない石段踏破に挑んでいた。六月の比ではないほど暑い。じりじりと背中を灼く太陽にはしばらく引っ込んでいてもらいたいものだ。 石段の踊り場には…

Case1:ハイドランジアの微笑

 「クソあちい……なんだってあいつの家はこんなとこにあんだ」 悪態をつきながら石段を上る。年々暑くなるのが早くなるような気がする、と思いながら、江角泰地《えすみたいち》はカッターシャツの腕をまくった。UPIに所属するようになってか…

序、  ――科学がどれだけ進歩をしても、理屈では説明がつかないことがある。そんな特殊事象が絡む事件・事故を捜査するために僕らは組織された。 ○ 「UPI?」「そう。江角くんを是非に、という声があってね」 地元で…