BL以外の短編・長編を掲載しています。
読後アンケート(選択式)|カクヨム版はこちら
月に叢雲花に風 鳴かぬ烏が身を焦がす
時は大正。豪商の娘・薫子は、駄菓子屋『てんぐ堂』で天狗の面をつけた謎の青年・あさひと出会い、好意を寄せられる。戸惑いながらも薫子はあさひと密かに文を交わし、互いに想いを深めていくが、ある日薫子の縁談が持ち上がる。苦労も厭わないと駆け落ちを願う薫子だが、あさひは「自分は人の理から外れるものだから」とその申し出を拒み、別れを告げて——。
一、邂逅
一、 「てんぐ堂……。ずいぶん懐かしい名前ですね」 薫子がその誘いを学友の美世子から受けたのは春のある日のことだった。商店が集まる街の一角にある駄菓子屋兼たばこ屋『てんぐ堂』には幼いころこそよく通ったが、高等女学校に通うようになってから三年…
二、再会
翌日、薫子は女学校から帰宅して鞄をおくと、ひとりで静かに家を出た。本来であれば二人いる兄のうちどちらかを連れて行くべきだが、そうしなかった。余計な釣銭を返すだけだから大丈夫、と自分に言い聞かせる。 昨日と同じ様に、店の前に行列ができている…
三、流転
川の水が運んだ泥が海に堆積するように、手紙のやり取りは続き、いつしか薫子の持っている桐の文箱には収まりきらないほどになっていた。ほんの一言二言を書き記したやり取りは、雨の日を除いてほぼ毎日続いている。 生まれて初めて異性と交わす手紙がこれ…
四、飛揚
それからふた月が経過し、町は豪商の娘が都市部の軍人に嫁ぐ話でもちきりだった。以前と変わらず『てんぐ堂』を手伝うあさひの耳には客のうわさ話がひっきりなしに入ってくる。「次の大安だってよ」「何がです?」 常連客の男が唐突に言った言葉にあさひは…
短編
冬の朝、図書室にて 春の夕暮れ、正門を抜けた先で
冬の朝の図書室には二人だけだった。 私の地元にはいわゆる大手の予備校が1校もなく、受験勉強といえば教室か図書室で、寒かったことを覚えている。 今日もどこかでがんばっているすべての受験生へのエールを込めて。誰かと一緒のはずなのに孤独な戦いも時がくれば終わる。その戦いをやりきったすべての人の健闘をたたえたい。
わたしの身体が覚えている海《短歌》
白波が寄せてはかえす桂浜 わたしはなにを洗濯しようか
王よ
風に乗った声は王に届くだろうか。
少女T
その屋敷には教授と呼ばれる男性とお手伝いの人が何人か住んでいた。
フルーツ女学園シリーズ
※すべてGL作品
王者の花の こがねひぐるま
髪に挿せば かくやくと射る 夏の日や 王者の花の こがねひぐるま(与謝野晶子作)