第四話 アザレアの失踪
満碧が汀夏とともに神祇省に通い出してから数週間経過した。季節はすっかり移り変わり、セミの鳴き声が聞こえるようになった。 この数週間のうちに、満碧は自分自身で見積もっていた以上に、文献を読み解き、考えることが楽しいということに気づいた。学が…
文章 蒼茫の彗星
第三話 氷菓子の行方
三、 満碧が菊名橋家にやってきてひと月が経った。勤めから帰ってきた汀夏に対して呪いの浄化を行う以外は、平穏な日々が続いている。生まれてこの方、自らの能力を使ったおつとめばかりしていた満碧からすると、それはとても新鮮だった。加えて実家のよ…
文章 蒼茫の彗星
第二話 夜半の残菊
二、 ――この運命からは死んでも逃れられないのだと思っていた。 ○ その日の夜、私室にいる汀夏のもとを満碧が訪ねてきた。昼間、部屋を辞したのち、急ごしらえで形代と木札を作ったという。気休めかもしれないが、今ある呪いの一部を浄化する…
文章 蒼茫の彗星
第一話 真珠と燐葉石
――この決めごとからは一生逃げられることができないのだと思っていた。○ 毎日同じことの繰り返しだった。「浄化の儀を執り行います松白御園(まつしろみその)が長男、満碧(まお)でございます」 清めの香がたかれた祓殿で、満碧は畳に手をついて深く…
文章 蒼茫の彗星
徒花にあらず 第一話
――きらびやかな金の装飾が施された宮殿、白亜の壁、天井からぶら下がるガラスの照明。 そのすべてがメルにとって目新しかった。南国というのはこうも豊かなものなのか、とうらやむ気持ちもあったが、すぐに仕方のないことだと割り切ってしまった。メルは…
徒花にあらず 文章
閑話二 新春一番!煩悩千本祓!
「江角くん、一月一日って空いてる?」 国屋から不穏な確認が入ったのは十二月の上旬だった。S県においては曇りないしは雨の日が増えており、本格的な冬の訪れを感じ始める時期である。「はあ、今のところ空いてますけど……また何か面倒事ですか」 警察官…
UPIスピンオフ 文章
閑話一 ■■の婿取り
「お兄さん、ちょっと教えてくれんね?」 休日、立ち寄ったコンビニにて、耳なじみのない言葉で声をかけられた江角が振り返ると、和服を身につけた若い女が立っていた。珍しい装いと砕けた口調に江角は面食らう。交番勤務だったころならまだしも、あまり人当…
UPIスピンオフ 文章
Case2:とりかえばやの匣
八月。本来は春木が忙しいだろうこの時期に仕事の依頼などしたくはないと思いながらも江角は何度目かわからない石段踏破に挑んでいた。六月の比ではないほど暑い。じりじりと背中を灼く太陽にはしばらく引っ込んでいてもらいたいものだ。 石段の踊り場には…
UPI 文章
煙比べのネオンサイン
創作男女|2025/11/3北海道コミティア22初出(サンプル)|治安が崩れた街を生き抜く治安維持部隊のミツヤと、その懐刀カンナ。冷たく乾いた日々の中で、言葉にできぬ想いを胸に、血と硝煙の間を二人は歩き続ける。荒廃と孤独の果てに灯る、かすかな温もりの物語。
文章 短編
最終話 Good-bye to Brilliant white days -Closing-
六、 「クッソ、やられた。またかよ……!」「しかも前回より性質が悪くなってますね」 悪態をつく志登の横で、冷静に雷山が指摘した。前回は組織を外れる意思表示をしたうえでの単独行動だったが、今回は退職の意思表示は見当たらなかった。しかし、居場所…
イノセントペイルブルー 文章
第五話 Good-bye to Brilliant white days -During turmoil-
――その日は、秋にしては暑く、夏にするにはやや気温の低い日だった。 翌日、午前中。 前日取り決めた通り、現在の汪幽教が拠点としている場所――【中枢】地区の一等地にあった――に志登と松本は訪れていた。〈アンダーライン〉本部からも徒歩で行け…
イノセントペイルブルー 文章
第四話 Good-bye to Brilliant white days -Opening-
四、 ――その日のことはきっと忘れられないだろう、と松本は言った。 「最近、動きがきなくさい」「? なんのです?」 ある日の夕方、いつもの通り六条院が隔離されている療養所までやってきた松本はその日あったことを話していた。その中で唐突な六条…
イノセントペイルブルー 文章