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冬の朝、図書室にて 春の夕暮れ、正門を抜けた先で

冬の朝の図書室には二人だけだった。 私の地元にはいわゆる大手の予備校が1校もなく、受験勉強といえば教室か図書室で、寒かったことを覚えている。 今日もどこかでがんばっているすべての受験生へのエールを込めて。誰かと一緒のはずなのに孤独な戦いも時がくれば終わる。その戦いをやりきったすべての人の健闘をたたえたい。

夜事

2024/2/1初出 もしも彼らが死○埋めをしたらの話。2024/3/10九州コミティア8で紙版同人誌として発行。

第一話 Stand up, everyone!

一、 ――その日は、春のおだやかな陽気に満ちた日だった。「いよいよねえ」「いよいよだね」 自警団〈アンダーライン〉第三部隊執務室にて仕事をする二人の男たちが言葉を交わす。今日は新人隊員の入団式と別部隊から異動してくる隊員の着任式が行われる日…

最終話  The pale light of dawn

  ――その日は晩夏の空気が残る秋の日だった。「もしもし」 六条院の私用端末からかかってきた通話に出た松本に、志登は一本のケーブルを見せた。慌ててスピーカーホンに切り替えてケーブルを端末に差し込む。端末位置の探知と録音を簡易的に行う装置に繋…

第四話 The gifted Child of God

四、 ――その日は夏の終わりの日差しが強く、暑い日だった。「え、眞島副隊長のお父さんって〈中央議会所〉の副所長さんなんですか?」 雑談から発展した話に眞島は苦笑しながら首を縦に振った。〈中央議会所〉は自警団〈アンダーライン〉の上位組織であり…