Case#2 稲堂丸
ああ、あの階段の話を聞いたのか。発動条件なあ、俺もわからねえな。わかってたらもっと早く対策されていたと思う。結局取り壊すまでは続いていたからなあ。
取り壊すといえば、取り壊すときにどうしても壊せない柱があったって聞いたな。ん? そうだ、柱だ。壊そうとすると工事の担当者が高熱出したり、重機のエンジンがかからなかったり、理由は様々だったが、とにかく取り壊し作業ができなかった。これが土地の端の方だったらよかったんだが、ど真ん中の重要な柱だったもんで、困ってたんだよ。
それで結局、重機を入れる前に柱の調査をしようって話になった。〈アンダーライン〉からも何人か隊員を貸したんじゃなかったか。それで調べたら、出たんだよ。
――柱に埋め込まれた人骨が。
おい、そんな青い顔するなよ。別に脅かしたくて言ってるわけじゃねえ。多分調べたら記録は出てくるし、報道もされたから隠してもいない。柱から出てきた人骨はちょうど人間一人分だった。骨盤の形から男だってことまではわかった。
ただ、すっかり仏さんになってる人骨を調べるのはただでさえ骨が折れるってのに……いや、言葉がよくねえな、時間と根気が必要なのに、その人骨はおそらく前の隊舎ができたときにはすでに白骨化してたもんだろうって見当がつけられてな。その当時の記録なんて〈世界を滅ぼす〉大戦のどさくさで正しいのも間違ってるのも全部ごちゃごちゃになってて整理なんてされてないだろ? いや、歯科記録のことだけじゃない。行方不明なのか、戦死したのかすら曖昧だ。
だから、懇意にしてる寺院に頼んで無縁仏として供養してもらった。遺族や子孫がいたらと思うと帰してやれなくて申し訳ないけどな。
最終的にその骨を供養してやったら柱は全部取り壊すことができたよ。最後までなんであんなところに骨を隠してたのかはわからなかったけどな。加えて当時、それを建材に使った理由も……まあ、こっちはものがなかっただろうから手当たり次第に何でも使ったってのが真相だろうな。ったく、誰だか知らねえけど、うまいこと雲隠れしたもんだ。いや、褒めるのは良くないな。
うん? ああ、こういう話を色々集めてんのか。俺で二人目? それなら次に話を聞きに行くならうちの副隊長が向いている。何の因果かそういうのに巻き込まれやすいんだ。面白い話が聞けると思うぜ。
(終わり)