月: 2020年3月

蒼茫の彗星

【あらすじ】
神職の家系である松白(まつしろ)家の長男・満碧(まお)は、真珠色の髪に燐葉石の瞳という普通とはかけ離れた見た目で生まれ、強力な〝浄めの力〟――人間の業や煩悩、ひいては人智を超えた呪いまでも鎮め、浄める力――を所持していた。半ば機械のようにお祓いや浄めの儀式をする者として扱われていた満碧が十七歳になってすぐ、神祇省勤めのエリートである菊名橋汀夏(きくなばしていか)との縁談が舞い込んできた。嫁いだ満碧を待ち受けていたのは、菊名橋家に代々続く短命の呪いを浄化し、解呪せよ、という難題だった――。
 神祇省勤めの呪われたエリート×強い浄化力をもつ巫覡の大正浪漫BL

  • 第一話 真珠と燐葉石

     ――この決めごとからは一生逃げられることができないのだと思っていた。○ 毎日同じことの繰り返しだった。「浄化の儀を執り行います松白御園(まつしろみその)が長男、満碧(まお)でございます」 清めの香がたかれた祓殿で、満碧は畳に手をついて深く…

  • 第二話 夜半の残菊

       二、 ――この運命からは死んでも逃れられないのだと思っていた。   ○ その日の夜、私室にいる汀夏のもとを満碧が訪ねてきた。昼間、部屋を辞したのち、急ごしらえで形代と木札を作ったという。気休めかもしれないが、今ある呪いの一部を浄化する…

  • 第三話 氷菓子の行方

      三、 満碧が菊名橋家にやってきてひと月が経った。勤めから帰ってきた汀夏に対して呪いの浄化を行う以外は、平穏な日々が続いている。生まれてこの方、自らの能力を使ったおつとめばかりしていた満碧からすると、それはとても新鮮だった。加えて実家のよ…

  • 第四話 アザレアの失踪

     満碧が汀夏とともに神祇省に通い出してから数週間経過した。季節はすっかり移り変わり、セミの鳴き声が聞こえるようになった。 この数週間のうちに、満碧は自分自身で見積もっていた以上に、文献を読み解き、考えることが楽しいということに気づいた。学が…