第一話 真珠と燐葉石
――この決めごとからは一生逃げられることができないのだと思っていた。○ 毎日同じことの繰り返しだった。「浄化の儀を執り行います松白御園(まつしろみその)が長男、満碧(まお)でございます」 清めの香がたかれた祓殿で、満碧は畳に手をついて深く…
第二話 夜半の残菊
二、 ――この運命からは死んでも逃れられないのだと思っていた。 ○ その日の夜、私室にいる汀夏のもとを満碧が訪ねてきた。昼間、部屋を辞したのち、急ごしらえで形代と木札を作ったという。気休めかもしれないが、今ある呪いの一部を浄化する…
第三話 氷菓子の行方
三、 満碧が菊名橋家にやってきてひと月が経った。勤めから帰ってきた汀夏に対して呪いの浄化を行う以外は、平穏な日々が続いている。生まれてこの方、自らの能力を使ったおつとめばかりしていた満碧からすると、それはとても新鮮だった。加えて実家のよ…
第四話 アザレアの逃避行(前編)
満碧が汀夏とともに神祇省に通い出してから数週間経過した。季節はすっかり移り変わり、セミの鳴き声が聞こえるようになった。 この数週間のうちに、満碧は自分自身で見積もっていた以上に、文献を読み解き、考えることが楽しいということに気づいた。学が…