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蒼茫の彗星

  • 第一話 真珠と燐葉石

     ――この決めごとからは一生逃げられることができないのだと思っていた。○ 毎日同じことの繰り返しだった。「浄化の儀を執り行います松白御園(まつしろみその)が長男、満碧(まお)でございます」 清めの香がたかれた祓殿で、満碧は畳に手をついて深く…

  • 第二話 夜半の残菊

       二、 ――この運命からは死んでも逃れられないのだと思っていた。   ○ その日の夜、私室にいる汀夏のもとを満碧が訪ねてきた。昼間、部屋を辞したのち、急ごしらえで形代と木札を作ったという。気休めかもしれないが、今ある呪いの一部を浄化する…

  • 第三話 氷菓子の行方

      三、 満碧が菊名橋家にやってきてひと月が経った。勤めから帰ってきた汀夏に対して呪いの浄化を行う以外は、平穏な日々が続いている。生まれてこの方、自らの能力を使ったおつとめばかりしていた満碧からすると、それはとても新鮮だった。加えて実家のよ…

  • 第四話 アザレアの逃避行(前編)

     満碧が汀夏とともに神祇省に通い出してから数週間経過した。季節はすっかり移り変わり、セミの鳴き声が聞こえるようになった。 この数週間のうちに、満碧は自分自身で見積もっていた以上に、文献を読み解き、考えることが楽しいということに気づいた。学が…

 

 

 

CALL NO ONE DESTINY

鍵付きの話は古の3桁の数字を入れてください

  • 1. The Person who called DESTINY

    一、 オーエン・ムーアの伴侶は変わり者だと言われる。それは彼の伴侶――エルヴィス・サリヴァンが王の従兄弟でありながら、王位継承権を放棄したことに由来するかもしれないし、魔力を持たないにも関わらず、優秀な研究者として宮廷魔術師と呼ばれる地位に…

  • 2. The beginning of searching the best way

    二、 数週間後。 気落ちしていたエルヴィスもすっかり元気を取り戻し、珍しく――ほとんど初めてと言ってもいい――自らオーエンを部屋に招いていた。話したいことがあるから部屋まできてほしい、と言うエルヴィスにオーエンが緊張したのも無理はない。「で…

  • 3. The silence is like the calm before the storm

     エルヴィスが「しばらく開発に没頭する」と言ってから月が二回満ち欠けした。その間、邪魔にならないように週二~三回ほど生存確認をするにとどめていたオーエンだったが、最近はそれも短く済まされるようになってしまった。正直、暇を持て余している。そん…

  • 4. The collapse creeps toward us

     オーエンがエルヴィスのもとを訪れなくなって二週間が経った。 初めは「喧嘩をされたのなら早く仲直りなさってください」と小言を言っていたエラも、オーエンの訪問がない期間が長くなるにつれて何も言わなくなった。時折、もの言いたげな視線を向けられる…

  • 5.Those days are like gentle hell (R-18)

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  • 6. Looking down on the Nation of Gold from the hill

     オーエンが進言した国境警備は中々強化されなかった。それどころか強化されたのはオーエンの監視の目の方であり、苛立ちをかみしめるはめになった。 ――もう、王は俺の進言を聞く気はないのだろうな。 やるせなさを抱きつつ、オーエンはエレノアから託さ…

  • 7.Episode of After That/Before my thoughts come true (R-18)

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月に叢雲花に風 鳴かぬ烏が身を焦がす

時は大正。豪商の娘・薫子は、駄菓子屋『てんぐ堂』で天狗の面をつけた謎の青年・あさひと出会い、好意を寄せられる。戸惑いながらも薫子はあさひと密かに文を交わし、互いに想いを深めていくが、ある日薫子の縁談が持ち上がる。苦労も厭わないと駆け落ちを願う薫子だが、あさひは「自分は人の理から外れるものだから」とその申し出を拒み、別れを告げて——。

  • 一、邂逅

    一、 「てんぐ堂……。ずいぶん懐かしい名前ですね」 薫子がその誘いを学友の美世子から受けたのは春のある日のことだった。商店が集まる街の一角にある駄菓子屋兼たばこ屋『てんぐ堂』には幼いころこそよく通ったが、高等女学校に通うようになってから三年…

  • 二、再会

     翌日、薫子は女学校から帰宅して鞄をおくと、ひとりで静かに家を出た。本来であれば二人いる兄のうちどちらかを連れて行くべきだが、そうしなかった。余計な釣銭を返すだけだから大丈夫、と自分に言い聞かせる。 昨日と同じ様に、店の前に行列ができている…

  • 三、流転

     川の水が運んだ泥が海に堆積するように、手紙のやり取りは続き、いつしか薫子の持っている桐の文箱には収まりきらないほどになっていた。ほんの一言二言を書き記したやり取りは、雨の日を除いてほぼ毎日続いている。 生まれて初めて異性と交わす手紙がこれ…

  • 四、飛揚

     それからふた月が経過し、町は豪商の娘が都市部の軍人に嫁ぐ話でもちきりだった。以前と変わらず『てんぐ堂』を手伝うあさひの耳には客のうわさ話がひっきりなしに入ってくる。「次の大安だってよ」「何がです?」 常連客の男が唐突に言った言葉にあさひは…