ピュア・ペネトレイション

最終話  The pale light of dawn

  ――その日は晩夏の空気が残る秋の日だった。「もしもし」 六条院の私用端末からかかってきた通話に出た松本に、志登は一本のケーブルを見せた。慌ててスピーカーホンに切り替えてケーブルを端末に差し込む。端末位置の探知と録音を簡易的に行う装置に繋…

第四話 The gifted Child of God

四、 ――その日は夏の終わりの日差しが強く、暑い日だった。「え、眞島副隊長のお父さんって〈中央議会所〉の副所長さんなんですか?」 雑談から発展した話に眞島は苦笑しながら首を縦に振った。〈中央議会所〉は自警団〈アンダーライン〉の上位組織であり…

第三話 Candy, Jam and chocolates -3 years ago-

三、 ――その日は冬の終わりの寒い日だった。「違法薬物の検挙、」「そう、最近激増してるんですよ。大体長い休みを挟むと増えるものなんですが、今年はちょっとペースが異常ですね」 冷える指先を擦り合わせながら松本が〈アンダーライン〉に出勤すると、…

第二話 Don’t miss the imposter!

二、 ――その日は、夏の手前の蒸し暑い日だった。「またデジタル詐欺ですか?」 と、〈アンダーライン〉第三部隊執務室で苦りきった顔をしているのは眞島だった。デジタル化が進んだ都市国家〈ヤシヲ〉において、金融機関もデジタル化が進んでおり、いわゆ…

第一話 Reproduction

 夜、街灯もない田舎道を自動車でひた走る。 人力運転の自動車が主流だった〈アンダーライン〉においても、ずいぶんと入れ替えが進み、今や大半の自動車が自動運転技術を搭載したものに変わった。 だが、相変わらず【住】地区二十番街〈ウプシロン〉に向か…