水の都に花煙る

第二話

 水神の神域で過ごす日々はよく言えば穏やか、悪く言えば退屈だった。ゆっくりしていくといいと言われたものの、数日で海鳥は飽きていた。 することがないと退屈だ、と言った海鳥に世話係の二は書庫を案内してくれたが、残念ながら海鳥は文字を読むことがで…

第一話

 夜も更けた時間に、ふと来訪者の気配を感じて甘霖は目を覚ました。 水神である甘霖が暮らすのは、自分自身の神気で作り上げた領域――神域であり、訪ねてくる者があればすぐに感知できる。「甘霖さま、起きていらっしゃいますか」 部屋の外から侍従である…