王よ

「民よ」
 王は呼びかける。
 滅びた国に応える臣民は存在しない、それでも。
「民よ、我の臣民よ」
 風に王の呼び声が乗る。
 荒野の夜には戦を知らない穏やかな風が吹いていた。
 風に乗った声は届くだろうか。
「王よ」

 

順序通り読むと王から民へ
逆に読むと民から王へ
ただし民は既に死者であり、生者の王に決して声は届かない。