Case#7 元岡
なんだか趣味の悪いことしていますね。あ、お仕事の一環でしたか。それは……その、失礼しました。ああ、今はちょうどご遺体の解剖が終わったところですね。火事のご遺体は、何度見ても慣れませんね。特に、ご遺族には見せられないと判断することが多くて……やるせないです。
あ、それでなんでしたっけ、怪奇現象についてでしたっけ。羽根戸さんもおっしゃっていたと思いますけど、私たちの仕事にはつきものですよ。どうしても科技研の、特に解剖室は日々様々なご遺体が運ばれては出されていきますし、お亡くなりになった方を嘆かれる方も多いですからね。
そういえば科技研の解剖室は三つあるんですけど、そのうち一つは日没前後三十分と日の出前後三十分は使用禁止です。私たちは交替勤務ではないので、夜明け前後に解剖をすることはまずないからいいですけど、日没後は季節によっては使う可能性があるので注意しないといけないですよね。え? なぜ使用禁止になるかって……昔から言うじゃないですか、黄昏時とかわたれ時って。ああいうときに〝どこか〟に繋がってしまうみたいですね。
以前、日没時刻を確認しないまま入ってしまった職員がいたんですけど、帰って来たのは翌日の日の出前の時間でした。真っ青な顔で帰ってきたその職員は、帰ってきた次の日から行方がわかっていません。退職届もないまま、忽然と姿を消してしまったので、一応長欠の扱いで在籍していることになっていますが。
私たちとしても解剖室がどこに繋がっているか聞いておきたかったのですけど、職員に話を聞けないままなので、未だにわからないままです。え、あ、そうですね。その時の職員以外にもうっかり解剖室に入ってしまった人はいますよ。一人だけで済むはずがないでしょう?
でも、その職員以外はずっと戻ってこないんです。そんな場所なので、どこに繋がっているのかわかるに越したことはないんですけどね。花江なんかは、いつか絶対に突き止めてやるんだって、はりきってドアや解剖室を調査していますよ。
本当はあの解剖室だけ閉鎖した方がいいってみんなわかっているんですけど、案外解剖を希望されるご遺体は多くて、閉鎖するのはまだ当分先だと思います。
(終わり)