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第三話 雪消

三、 翌日。サンドラに買い求めてもらった占い用の月長石は幸い、祖国で使用していたものと同じ様式のものだった。メルと師父が占石(せんせき)と呼んでいたそれは、二十二個の石に古代ジュード文字が彫られており、文字はそれぞれに意味を持つ。一つの文字…

第二話 異邦

二、 数日後、執務の間の時間が取れたということで、メルは女王の招きに応じて彼女の私室を訪れていた。まだ正式な婚約者とも言えない段階で一国の女王の私室に入ってもよいものかと気が引けたが、サンドラの「大丈夫ですよ。陛下もこの国の重臣の方々もその…

第一話 南へ

一、 きらびやかな金の装飾が施された宮殿、白亜の壁、天井からぶら下がるガラスの照明。 そのすべてがメルにとって目新しかった。南国というのはこうも豊かなものなのか、とうらやむ気持ちもあったが、すぐに仕方のないことだと割り切ってしまった。そう思…

第四話 アザレアの失踪

 満碧が汀夏とともに神祇省に通い出してから数週間経過した。季節はすっかり移り変わり、セミの鳴き声が聞こえるようになった。 この数週間のうちに、満碧は自分自身で見積もっていた以上に、文献を読み解き、考えることが楽しいということに気づいた。学が…

第三話 氷菓子の行方

  三、 満碧が菊名橋家にやってきてひと月が経った。勤めから帰ってきた汀夏に対して呪いの浄化を行う以外は、平穏な日々が続いている。生まれてこの方、自らの能力を使ったおつとめばかりしていた満碧からすると、それはとても新鮮だった。加えて実家のよ…

第二話 夜半の残菊

   二、 ――この運命からは死んでも逃れられないのだと思っていた。   ○ その日の夜、私室にいる汀夏のもとを満碧が訪ねてきた。昼間、部屋を辞したのち、急ごしらえで形代と木札を作ったという。気休めかもしれないが、今ある呪いの一部を浄化する…

第一話 真珠と燐葉石

 ――この決めごとからは一生逃げられることができないのだと思っていた。○ 毎日同じことの繰り返しだった。「浄化の儀を執り行います松白御園(まつしろみその)が長男、満碧(まお)でございます」 清めの香がたかれた祓殿で、満碧は畳に手をついて深く…

6. Looking down on the Nation of Gold from the hill

 オーエンが進言した国境警備は中々強化されなかった。それどころか強化されたのはオーエンの監視の目の方であり、苛立ちをかみしめるはめになった。 ――もう、王は俺の進言を聞く気はないのだろうな。 やるせなさを抱きつつ、オーエンはエレノアから託さ…

4. The collapse creeps toward us

 オーエンがエルヴィスのもとを訪れなくなって二週間が経った。 初めは「喧嘩をされたのなら早く仲直りなさってください」と小言を言っていたエラも、オーエンの訪問がない期間が長くなるにつれて何も言わなくなった。時折、もの言いたげな視線を向けられる…

第二話

 水神の神域で過ごす日々はよく言えば穏やか、悪く言えば退屈だった。ゆっくりしていくといいと言われたものの、数日で海鳥は飽きていた。 することがないと退屈だ、と言った海鳥に世話係の二は書庫を案内してくれたが、残念ながら海鳥は文字を読むことがで…